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芸術鑑賞の備忘録

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第5話

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第5話を鑑賞しての備忘録
監督は、草野翔吾。
原作は、レンタルなんもしない人(森本祥司)『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』。
脚本は、政池洋佑。

交通費だけの請求で、ひとり分の数あわせサービスを提供する「レンタルなんもしない人」こと森山将太(増田貴久)。最初の案件が予定より早くに終了し、午後3時頃、一旦帰宅すると、そこには旅行の帰りに立ち寄ったという義父(小木茂光)と義母(大島さと子)の姿が。帰宅時間が早いことや新人の代わりに花見の場所取りをするという将太に、義父母は当惑している様子。妻・沙紀(比嘉愛未)は売り切れ御免の有名店のケーキを買いに行かせるとの口実で将太を玄関に連れ出し、両親を心配させないため、将太が仕事を辞めて「レンタルさん」をしていることを伝えていないと告げる。将太がやむを得ずコンビニで買ってきたケーキを頬張る四人。義母が沙紀の料理はどうか尋ねると、将太は最近の昼・夜のメニューを次々と挙げて太鼓判を押す。しょっちゅう昼ご飯を家で食べている将太をフレックス・タイムで働いていると理解した義父は、定年退職して不要になったネクタイを将太に譲り渡す。いったんは受け取った将太だったが、両親の帰りがけに、会社を辞めたのでやはり受け取れないとネクタイを返す。事情を察し話し合う必要を感じた義父は、帰宅を先延ばしにして、部屋に戻る。義父は娘夫婦の将来を心配し、「レンタルさん」は責任逃れだと将太を非難する。

新聞に掲載されていた山崎ナオコーラのインタヴューでの発言は、このドラマの放送回のテーマ(無償の労働・サーヴィスが生み出す価値)を受けたかのようなタイムリーなものだった。

「社会人というと、勤め人だけを指す空気がありますが、主夫もニートも学生も、ただ消費するだけでも、社会を回す人だと思うんです。コロナの影響で、働かなくても堂々としていればいいという考えが広まると思う。『稼がないと』『同僚に迷惑がかかる』と思って休めなかった人も、根っこには『働いていないと社会人じゃない』という思い込みがあると思う。お金を稼ぐのが人間だという考えです。でも、コロナでその価値観が変わり、前より休みやすいしゃかいになると思うし、働く働かないで線引きする考えも薄まるのではないでしょうか」(藤原章生「この国はどこへ コロナの時代に 作家山崎ナオコーラさん『無理に働かない』広まる予感」『毎日新聞』2020年5月8日夕刊2面)

沙紀(比嘉愛未)が夫の「なんもしない」を受け容れる素地として、仲睦まじい義父母がロールモデルであることが分かる。義父母に理解がありすぎる(あるいは理解が性急な)点はドラマの展開としては許容範囲だろう。
「レンタルさん」と真逆のキャラクターである営業マン神林勇作(葉山奨之)が必死に成功を追い求める背景に、医師一家の中で医師にならなかった長男であった(弟は医師になる)という事情が初めて明らかにされる。
ほとんど列車の走行音にかき消される金田(古舘寛治)の語りとそれを聞いて感動する警官(益山U☆G)のやり取り(?)が最高。最近、劇団子供鉅人の俳優をドラマや映画でちらほら見かける。