可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 曽根裕個展『石器時代最後の夜』

展覧会『約束の凝集 vol.1 曽根裕「石器時代最後の夜」』を鑑賞しての備忘録
gallery αMにて、2020年8月29日~11月14日。

長谷川新のキュレーションによる展覧会シリーズ「αMプロジェクト2020-2021:約束の凝集」の一環として行われる、曽根裕の彫刻展。

表題作《The Last Night of the Stone Age》は、石工が石を切ったり叩いたり様々な作業をしている映像をスクリーンに投影するインスタレーション。再生されている映像データは、大理石で作ったケースに収められた水冷式PCに保存されている。白い大理石の滑らかさは、水冷式であることがデータの温度を下げることがないように、映像の滑らかさに微塵も関係することがない。それでも、映像を見せるために照度を下げた会場の中で、大理石のぼんやりとぬめったような白い輝きに、鑑賞者が映像との調和を感じることはあるだろう。プロジェクターは、1つの大理石から削りだして磨かれた端正なPCケースと異なり、積み上げられたサヌカイトの上に設置されている。平らな面を生み出す方法を、石の種類に合わせて替えている。様々な形の9つの断片を組み上げ、アクロバティックに平面を作る、サヌカイトの軽やかは、大理石との関係でより鮮明に浮かび上がるだろう。

《Double Log (Washinoyama tuff)》は、両腕を伸ばす寸胴なトルソのように、Y字型に切り出された凝灰岩。丸太(=Log)をタイトルに冠しており、木の幹の彫刻であることが、年輪(断面に刻まれた同心円)からはっきりする。年輪の表現が幾何学的であるがゆえに、それとの対比で表面(木肌)を覆う凹凸が自然に見えてくる。また、Y字の3つのベクトルが持つ無限性(3人称で全てを表現できるような可能性)と相俟って、生長=成長も感じさせよう。

《Birthday Party 1965-2020》は毎日のように開かれた作家のバースデーパーティーの記録。誕生を祝うのが1年周期である必要はない。否、日々、誕生の奇蹟を言祝ぐことこそ行われしかるべきだとの感慨を生む。サヌカイトのスクリーンに投影されることで、石の作品3作品が揃う。3という数字が表す無限の可能性が導入され、日々の記録(=日誌=Log)で3作品が貫かれる。