可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『永井一正の絵と言葉の世界』

展覧会『いきることば つむぐいのち 永井一正の絵と言葉の世界』を鑑賞しての備忘録
ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて、2020年10月9日~11月21日。

グラフィックデザイナー永井一正の言葉といきものを描いた絵(「LIFE」シリーズ)とをまとめた本『いきることば つむぐいのち』(芸術新聞社)の内容を展示する試み。

1階では、照明を落とした空間に、吊された「LIFE」シリーズのモノクロームの絵画群が1点ずつがスポットライトを浴びて浮かび上がる。オオカミ、シカ、ウシ、ゾウ、フクロウ、カメ、そしてヒトなどがモティーフだが、ぼかす、きりはなす、つなげる、といった変化が与えられて、「平行動物」や「平行生物」と呼べるような奇矯な姿を見せるものも少なくない。それらの持つ形の曖昧さは、いきものたちがいつか闇に溶けて、緩やかに繋がっていく様を表そうとするものかもしれない。いきものたちの間には、白く発光する文字による縦書きのメッセージが12個掲げられている。「本物の美と出会う。自分が問い直される。」、「いったん立ち止まって、すべてを考え直す時期にきている。」、「何かを断念しなければ、何かを得ることはできない。」、「人の痛みを忘れないことも、ひとつの想像力だと思う。」、「想像力からこそ優しさが生まれる。」など。
1階から地下の会場へ降りる階段には、液晶画面が設置されていて、オオカミの姿にオオカミの顔が重ねられた、本展のメインヴィジュアルが表示されている。4つのパッチリとした目が時折動いたり、瞬いたりする。目の訴える力が非常に強い。
地下の会場も照明が落とされ、一番広い壁面に、「LIFE」シリーズのいきものの姿が左右別々の作品が同時に投影されている。それぞれが別個に上へスクロールしていき、いきものの目の位置でいったん停止するようにプログラムされている。スクロール(=巻物)が円環のイメージを訴える。会場の一角にでは、黒い「葉」に白い文字で記された言葉が蔦のように茂る。唐草模様のように生命力を表現する狙いがあるのだろう。