可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『Exploring』

展覧会『Exploring』を鑑賞しての備忘録
銀座蔦屋書店のGINZA ATRIUMにて、2020年10月20日~31日。

児玉麻緒、須永有、髙畠依子、仲田智、松井えり菜が出展するグループ展。

松井えり菜の《かぼちゃホリック》は、画面いっぱいに描かれた南瓜の図。南瓜と言えば、南瓜と玉葱を描いて「君は君 我は我 されど仲良き」と記した武者小路実篤の《野菜図》、あるいは岸田劉生《冬瓜葡萄図》や劉生に師事した椿貞雄《冬瓜南瓜図》などの蔬菜の絵を連想させる。南瓜の煮汁で染めたような背景と南瓜の硬い皮には、南瓜に対する強い愛着が表明されているようだ。南瓜の12分の1ほどが切り出され、そこから麗子像の一部に連なるような「デロリ」とした作者の顔がのぞいているのは、「我は我」と強く訴えながらも、周囲の様子を気にする気弱さが表れているようで微笑ましい。
同じく松井えり菜の《テラ(地球)に一つだけの花》は、おそらくヤン・ブリューゲル(父)(Jan Brueghel de Oude)の《青い花瓶の中の花束》の名で知られるウィーン美術史美術館所蔵の絵画《Blumenstrauss mit Traueriris in einer chinesischen Vase》(フラマン語では"Boeket bloemen met zwarte iris in een Chinese vaas"?)をもとに描かれた自画像。青花磁器(ブリューゲルの作品の青磁?と異なる)に活けられた複数の花から作者の顔がのぞき、あるいは描き込まれている。作者を象徴でもあるウーパールーパーの色の花以外は色味が抑えられモノクロームに近い配色になっている。分人的なあり方を呈示しているのかもしれない。花瓶が置かれているのは室内ではなく森か洞窟か屋外であるのは、タイトルからも窺える通り、グローバリゼーションの中で自己を位置づけようとの意思の表れだろう。ブリューゲル博物学的関心の継承を示すものか、鹿や熊や梟などが描かれているが、生き物としてではなくキャラクターとして登場している。貼り付けられたイミテーションパールと相俟ってキッチュな世界が強調される。
松井えり菜によるヤン・ブリューゲル(父)のパロディに向かい合うのは、須永有による雪舟《慧可断臂図》へのオマージュ。慧可が左腕を切り落として面壁座禅中の達磨に決意を示したというエピソードを描いた作品から人物を排除し、洞窟内に現れる絵筆とそれを握りしめる右の拳へとモティーフを絞り込んでいる。社会主義プロパガンダのポスターのようでもあるが、モノクロームを基調に筆先の黄色い絵具だけが灯火のように輝く様子が表現されている。《絵筆で照らす 3》と《絵筆で照らす 4》とが、黄色い背景に塗り残した部分でほぼ十字で表される白鳥を描いた《光と影》を挟んで三幅対のように掛けられている。白鳥が、絵画の火を絶やさぬよう飛び回っているように見える。白鳥は作者の姿であろうか。