可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 fumiko imano個展『somehow somewhere sometimes at some place for some reason』

展覧会『fumiko imano展「somehow somewhere sometimes at some place for some reason」』を鑑賞しての備忘録
KOSAKU KANECHIKAにて、2020年10月17日~11月21日。

fumiko imanoの写真展。

《kew/London/2019》は、ロンドンのキュー王立植物園の巨大温室「パームハウス」で双子が撮影した記念写真のように見える。だが、実際は、作者が位置とポーズを変えて撮った2枚の写真を切り合わせて作ったセルフポートレートである。《twinnig on my way to NYC/2018》のように鏡(鏡像)を用いて1枚で完成させた作品もあるが、原則として2枚のセルフポートを組み合わせることで1点の作品が作られている。あえてズレを残すことで作品が切り貼りという合成で作られていることが明示されている。ディープフェイクが進行する現実に抗するがごとく、《minipolice/tokyo/2020》などの最新作では、写真をモノクロームにした上、赤い糸で縫い合わせることで、繋ぎ合わせが強調されている。実際、撮影には時間の差が生じる以上、二人は「別人」であると言えなくはない。また、左右の自己が自己の多面性を浮き出させる「ステレオ写真」として機能しているとも評し得よう。面白いのは、大きな岩に腰掛けて目を瞑った作者が両手を拡げている《healing/nyc/2016》だ。他の作品では「もう一人」が存在するため、写っていない「もう一人」が召喚されてその場に存在するように感じてしまうのだ。あたかも降霊術のようである。パントマイム的であり、夢幻能的である。型が不在を現在させるのだ。この感覚を鑑賞者がつかむと、パリのサントーギュスタン教会の礼拝堂を舞台にした《saint augustin/paris/2017》でも、前の座席で祈る一人が、背後に座るもう一人を降霊させたように見えてくるだろう。