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芸術鑑賞の備忘録

映画『アーニャは、きっと来る』

映画『アーニャは、きっと来る』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のイギリス・ベルギー合作映画。109分。
監督は、ベン・クックソン(Ben Cookson)。
原作は、マイケル・モーパーゴ(Michael Morpurgo)の小説『アーニャは、きっと来る(Waiting for Anya)』。
脚本は、トビー・トーレス(Toby Torlesse)とベン・クックソン(Ben Cookson)。
撮影は、ジェリー・バスベンター(Gerry Vasbenter)。
編集は、クリス・ギル(Chris Gill)。
原題は、"Waiting for Anya"。

 

1942年夏。フランスはナチスに敗れたため、パリを含む北部はドイツに占領され、ユダヤ人の強制収容所への移送が始まっていた。ある鉄道駅。ユダヤ人たちがナチスの兵士たちによって次々と貨物車に押し込められていく。ユダヤ人の行列の中で幼い娘アーニャの手を引いていたベンジャミン(Frederick Schmidt)は僅かな隙に貨物車の下に娘とともに飛び込む。向かいのプラットホームのベンチに座っていた乗客が驚いた眼差しを二人に投げかける。列車の到着を告げる駅員も二人に気が付いたようだ。列車が入線する。ベンジャミンは客車の窓を叩いて、娘を受け取ってくれるよう頼み込む。一人の女性が彼に入口に回るよう促す。ベンジャミンは彼女にアーニャを託す。パパ、行きたくないよ。ベンジャミンは離れていく列車を見送ると、駅から逃走する。フランス南部、ピレネー山脈の山間部にある小さな村レスカンでは、昔ながらの生活が続いていた。13歳のジョー(Noah Schnapp)が斜面に広がる牧草地で羊に草を食ませている。祖父アンリ(Jean Reno)からは食べていても本を読んでいても何をしてもいいが寝ることだけはないようしろと口を酸っぱくして注意されていた。だが漫画を読むのにも飽きてうたた寝をしてしまう。牧羊犬のルフの声にジョーは目を覚ます。犬は森に向かって吠え続ける。大きな熊が姿を現す。ジョーは慌てて村へと戻る。熊だ、森に熊が出た! ジョーの訴えを聞きつけ、アンリら数名が銃を携えて熊撃ちに出発する。ジョーは家で母(Elsa Zylberstein)の手伝いをして待つ。遠くで銃声が聞こえる。無事に仕留めることに成功した一行が広場に熊を掲げ、その前で記念撮影をする。熊を撃てたのはジョーが知らせてくれたおかげだ。ジョーと熊に乾杯! ジョーはルフの姿がないことに気が付くと、一人森へ入っていく。間もなく蹲るルフを発見する。勇敢じゃないか。一人の男に声をかけられた。もう血は止まっている。パンでも食べて落ち着けよ。ジョーは差し出されたパンを口にする。名前は? ジョー・ラランド。よろしく、ジョー。撃たれたのは母熊だったんだ。この小熊を守るためさ。男は瓶に入ったミルクを小熊に与える。小熊はどうなるの? うちに連れて帰るさ。私を見かけたことは他言するな。村中がお前の居眠りを知ることになるぞ。俺たちは出会っていない、いいな。男はジョーに念を押すと小熊を抱えて立ち去る。ジョーは小熊が気になって仕方が無く、密かに男の跡を付けた。男が向かったのは、変わり者で通っているオルカーダ(Anjelica Huston)の家。オルカーダは男と言い合っている。出かけるのは夜だけの約束だろ、ばれたらどうするんだい! あの少年のことは脅しておいたから心配ないさ。私にはお前しかいないんだ、ベンジャミン。アーニャもいる。そのうちやって来るさ。ルーフに豚が騒ぎ出し、オルカーダが豚の様子を見に行こうとして、家の外を駆けていく少年の姿に気が付く。翌日、村の酒場では、フランス政府はドイツの占領政策に協力するとの声明がラジオから流れている。ジョーは空の酒瓶を盗み出す。ジョーは学校でも上の空。頭にあるのは小熊のことだけ。帰宅して、母が山羊の乳を搾るのを手伝う。オルカーダってどんな人? トラブルメーカーよ。お爺さんが何て言おうと近づいちゃ駄目よ。母親が離れた隙にジョーは酒瓶にミルクを入れる。友達に会ってくる! ジョーはオルカーダの家の納屋に入り込み、シャベルにミルクを入れて小熊を待つ。藁の山の傍に小さな靴が落ちているのに気が付く。私の靴! 小さな女の子(Enola Izquierdo Cicuendez)が出てくる。ジョーが驚いて納屋を出るとオルカーダが待ち構えていて、話があるという。何を見たんだい? 何も見てないです。嘘をつくことはないだろうね? いつもというわけでは。ベンジャミンがジョーに告げる。私はユダヤ人だ。ドイツ人は私たちの家を奪い、パリから追い出した。離れ離れになってしまった幼い娘のアーニャをここで待っている。納屋の女の子は? レアだ。あと4人来ることになっている。ベンジャミンはね、子どもたちに山を越えさせてスペインへ逃がそうとしてるんだ。このことは秘密だ。二度とここに来るんじゃないよ! ジョーがアーニャのことを考えながら家路を急いでいると、見慣れない車列が村に向かっているのが見えた。ドイツ軍の分遣隊が国境警備のために村に派遣されたのだった。

 

ピレネー山脈の山間部の村を舞台に、ユダヤ人の子どもたちをスペインへ逃すために奮闘した人々の姿を描く。
ドイツ軍の兵士達を一面的に敵として描き出すのではなく、人間的な側面も映し出している。
フランスを舞台にしたフランス人とドイツ人の物語だが、原作が英語のため、本作品も英語で語られる。