可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『JUNK HEAD』

映画『JUNK HEAD』を鑑賞しての備忘録
2017年製作の日本映画。99分。
監督・原案・撮影・編集は、堀貴秀。

 

遺伝子操作により半永久的な寿命を手に入れた人類は、その代償として生殖能力を失った。疫病の猖獗により人口の30%を失った人類は、生殖能力の復活を期し、かつて地下開発のため創造された人工生命体で、独自の進化を遂げ地下世界に跋扈する「マリガン」の調査を開始する。一人の調査員が地下空間に向かうべく、投下カプセルのスタート地点にやって来た。彼は、青空を見上げ、地上世界に別れを告げる。調査員を乗せたカプセルが巨大な穴に向かって投下され、地中深くに高速度で落ちていく。
地下世界のある区域では、「マリガン」を生み出す元となる個体を発見した二人組の警備員がミサイルを撃ち込み、破壊した。その個体は一旦生命活動を停止すると、膨らみ始め、樹状に変形していく。警備員たちは樹木化した個体を火炎放射器で焼く。
地上から投下されたカプセルは、不審物として誘導ミサイルによってマリガンに撃墜されバラバラに粉砕されてしまったが、調査員の頭部はさらに地下深くへと転がり落ちていく。
黒いスーツに身を固めたずんぐりむっくりしたマリガン3体が、廃品回収のためカートを押しながら巡廻していると、上方から何かが落ちて来る。丸みを帯びたケースの表面にスコープらしきものが6つあり、その1つが光っている機械。調査員の頭部であったが、彼らには何だか分からなかった。3体によって持ち込まれた頭部を受け取った博士は、人間であることを見抜き、損傷が大きいがあり合わせの部品で身体を与えることにする。身体を得て、意識を回復した調査員だったが、記憶が失われ、状況を把握することができない。博士はずんぐりむっくりたちに、恢復を促すため「人間」を連れて行動するよう依頼する。廃品回収の巡廻に向かった3体に従った調査員は、途中で彼らとはぐれてしまう。

 

独自の進化を遂げた人工生命体「マリガン」が蔓延る、人類によって放棄された地下世界を彷徨する、人間の地下世界調査員の運命を描くコマ撮りアニメーション。
間が抜けていて憎めないキャラクターたちと、食べることのみに執着する獰猛な怪物たちとが織りなす地下世界。主人公の調査員が次から次へとアクシデントに見舞われていくのに引っ張られ、鑑賞者も訳の分からないまま作品世界へと巻き込まれていく。
粉砕された調査員を博士が再生させたように、作家はフィギュアに命を吹き込んでいる。フィギュアに生々しい存在感を与えながらも、フィギュアであることによってグロテスクさや残虐さを適度に押さえ込むことに成功している。
荒涼とした廃墟を舞台にしながらユーモアで世界に潤いを与えている。とりわけ、ずんぐりむっくりの3体は、馬鹿馬鹿しいキャラクターを印象づけておいてからの変貌が見事。
独自の世界を丁寧に作り込んでいるにも拘わらず、オープニングクロールを安っぽく表現したのにはどんな理由があるのだろうか。