可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『パーム・スプリングス』

映画『パーム・スプリングス』を鑑賞しての備忘録
2020年製作のアメリカ・香港合作映画。90分。
監督は、マックス・バーバコウ(Max Barbakow)。
原案は、マックス・バーバコウ(Max Barbakow)とアンディ・シアラ(Andy Siara)。
脚本は、アンディ・シアラ(Andy Siara)。
撮影は、クィエン・トラン(Quyen Tran)。
編集は、マシュー・フリードマン(Matthew Friedman)とアンドリュー・ディックラー(Andrew Dickler)。
原題は、"Palm Springs"。

 

カリフォルニアのコロラド沙漠。ビッグホーンの姿が見られる。トランスフォーム断層の影響か、突然轟音とともに地面が割れていく。

ナイルズ(Andy Samberg)は恋人のミスティ(Meredith Hagner)の声で目を覚ます。彼女は脚にエアーストッキングをスプレーしている。綺麗な脚だ。2人は対面座位で行為に及ぶが、汗をかきたくないミスティはナイルズから体を離す。私を見て自分でやって。私で逝かないのはあなたくらい。11月9日。パームスプリングスのリゾートホテル。タラ(Camila Mendes)とエイブ(Tyler Hoechlin)の結婚式当日の朝。ミスティはブライズメイドとして結婚式に出席するため忙しい。ナイルズはプールに入り、浮き輪に乗って1人ビールを飲んでいる。プールに飛び込んだジェリー(Tongayi Chirisa)にビールを渡す。どんな一日だった? まだ始まったばっかりだから、夜に聞いてくれよ。何が起こるか分からないだろ。結婚式がトレヴァー(Chris Pang)の司会でスタートする。タラの父ハワード(Peter Gallagher)や母ピア(Jacqueline Obradors)を始めとした列席者が見守る中、恙無く進行していく。気が滅入っているサラ(Cristin Milioti)はバーに向かうと、デイジー(Jena Friedman)にワインを頼み、グラスになみなみとつがせる。ブライズメイドのミスティはスピーチを終えると、新婦の姉でありメイド・オブ・オナーであるサラを呼ぶ。サラは酩酊していてスピーチができる状態ではない。ボンソワール、ミ・ファミーリア・エ・タミーチ! アロハシャツ姿のナイルズが大声を上げて現れ、嫌がるミスティからマイクを取り上げる。エイブが隣のタラに尋ねる。誰? ミスティの彼氏。僕たちは生まれ落ちて途方に暮れてる、で、見出されるんだ。ナイルズのスピーチに会場は静まる。それでも、新婦のタラが骨髄移植のドナーになったことを挙げてその献身を讃えると、会場に拍手がわき起こる。続いてナイルズは、僕たちの時間を君に捧げようと、サラに語りかけるように話し始める。信じられないことだらけだろうけど、1人じゃないってことを忘れないで。僕たちは生まれ落ちて途方に暮れてる、で、見出されると再び語ったナイルズは、最後に皆に乾杯を促す。人々がダンスに興じる中、ナイルズはサラに積極的にアプローチする。ナイルズには恋人のミスティがいるためにサラは躊躇するが、ナイルズからミスティの浮気現場を見せられて誘いに応じる。沙漠の岩陰で2人が交わろうとして、ナイルズがアロハシャツを脱ぎ捨てると、背中に矢が刺さる。悲鳴を上げるサラ。ナイルズは逃げ出し、弓を持った男(J.K. Simmons)が彼を追跡する。逃走中、脚にも矢を受けたナイルズは、岩山の中にある、中から光が漏れる洞窟へと這って向かう。その姿に気が付いたサラは、ナイルズの制止を聞かずに後を追う。サラは光に包まれる。
サラが目を覚ますと、タラとエイブの結婚式当日の朝だった。

 

サラ(Cristin Milioti)は、ナイルズ(Andy Samberg)とともに、パームスプリングスのリゾートホテルで過ごす11月9日を繰り返すことになってしまった顚末を描く。
同じ日がまたやって来るのだからと、サラやナイルズは、大胆な行動を取ったり、他人に気前よく振る舞うことに躊躇がない。しかも、繰り返されるのは、リゾート地での安楽な1日。行動パターンを変えれば、何度でも楽しく過ごすことは不可能ではない。それでも、明日を明日として迎えたいという欲求が募っていくのは、サラやナイルズの記憶はリセットされることなく蓄積されていくからだ。
冒頭の結婚式において、新婦の姉であり、メイド・オブ・オナーであるサラが鬱屈している原因や、ナイルズが結婚式のスピーチとして不自然な内容を語り、またサラにだけ語りかけるように振る舞っている理由は、物語の進行によって明らかにされていく。
コメディであり、ごく気軽に見られる作品でありながら、自らの生活について内省を促され、また、積み重ねの大切さを噛み締めないわけにはいかない。