可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『Window Gallery in Marunouchi―from AATM』

展覧会『Window Gallery in Marunouchi―from AATM』を鑑賞しての備忘録
行幸地下ギャラリーにて、2024年1月12日~3月17日。

AATM2023のグランプリ受賞者・浅野克海、三菱地所賞・汪汀、過去のAATMに参加した奥村彰一、衣真一郎、橋本晶子、宮林妃奈子の作品を展観。

浅野克海は、色取り取りに着彩したキャンヴァスが木枠から剥がれて重なり合い、木枠から流れ落ちて床に自律し、さらに隣の木枠へと連なるインスタレーション《この世界、魂を震わすモノ》を展開。汪汀は、消費主義の観点から本来母性的な大地を管理可能な機械的な大地へと変貌させている欺瞞を、工業製品を用いて制作した植物的な形態のオブジェ《偽自然》で揶揄する。

奥村彰一は熱帯植物、動物、乗り物に女性を組み合わせた絵画を出展。《ムーンローバー ピクニック》では月面探査車から身を躍り出した女性が手を伸ばす先に蓮池が広がっている。水面に身を翻すのはいずれ龍になる鯉の姿が。月へと打ち上げ(launch)られた女性と蓮池(れんち)のやがて龍門を昇る鯉とは重ねられているため、同じピンクを基調色として表わされている。作家は園林(中国园林)とその中に点在する盆景や太湖石との関係が入れ籠になっていることに着目し、絵画にも同じく入れ籠の楽園を見ている。女性の手元には四阿に佇む宇宙飛行士の姿がある。四阿が象徴する地球ないし現実と月が象徴する宇宙ないし絵画(芸術作品)とは繋がっていて、女性は自在に両世界を遊泳してみせるのである。衣真一郎は、前方後円墳の墳丘の形態を軸に、植物や企業のロゴ、人物などがスタンプで押したように画面に配される《横たわる風景》シリーズの新作2点を展示。旧作の《家》や《古墳とピラミッド》を併せ、作家の主題が不変であることが示される。橋本晶子は、吊り下げた布、吊り下げたカーテンの絵、低い台に描いた芝生の絵を割れたガラス瓶が象徴する光=時間を介在させることで繋ぎ合わせ、この場と描かれた場とを繋げようとするインスタレーション《その部屋のためのスケッチ》を設置している。宮林妃奈子は《Being flowing》と題した複数の絵画をインスタレーションとして提示。とりわけ複数の布を継ぎ接ぎして吊した頼りにない画面は、変化を重ねていく「流行」こそ「不易」と訴えるようだ。背後には自作の詩(?)が掲げられ、その一節に「われわれはみな落ちる」とある。