映画『アンチグラビティ』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のロシア映画。111分。
監督は、ニキータ・アルグノフ(Никита Аргунов)。
脚本は、ニキータ・アルグノフ(Никита Аргунов)、アレクセイ・グラビツキー(Алексей Гравицкий)、ティモフィー・デキン(Тимофей Декин)。
撮影は、セルゲイ・ディシュク(Сергей Дышук)。
原題は、"Кома"。
白亜の高層建築が立ち並ぶ都市に明るい日差しが降り注ぐ。人が一人も存在せず、現実感のない光景。突然建物に亀裂が入り、崩れ去っていく。その同じ都市景観を再現した建築模型が部屋いっぱいに広がっている部屋で、眠っていたヴィクター(Риналь Мухаметов)が目を覚ます。起き上がって冷蔵庫に向かうと、一部が腐食して霧散していくのに気が付く。床にも同じような現象が生じている。部屋を出ると通路に居合わせた人物も同じように消えていく。階段を降りて建物を出ると、高層建築が宙に浮いていたり、傾いていたりと、やはり様子がおかしい。車や通行人は停止している。黒い亡霊のような得体の知れない存在にヴィクターは襲われる。額を負傷したヴィクターだったが、突如現れた武装した男女3人組によって彼は救い出される。ヴィクターを襲った、彼らが「死神」と呼ぶ存在から逃れるため、ヴィクターは彼らとともにチャイナタウンやヴェネツィアを彷彿とさせる街並みをなどを抜けていく。記憶が組み合わさってできているという世界のそれぞれの空間は固有の方向に重力が働いているため、その方向を見定めることでうまく飛び移ることができた。だが「死神」の追跡は止まず、追いつかれた際に一行の一人が自爆して犠牲になった。ヴィクターは戦闘能力が高いファントム(Антон Пампушный)と治癒能力を持つ女性フライ(Любовь Аксёнова)とともに荒野にやって来る。うち捨てられたバスが「ワームホール」となっていて、それを抜けると、彼らの拠点にたどり着いた。一団はヤン(Константин Лавроненко)という指導者によって率いられており、ファントムやフライのような特殊能力を持つ者は物資を収集するために遠征し、その他の者は拠点で肉体労働に当たっていた。ファントムはヴィクターの特殊能力を開花させようと彼を「特訓」する。だが、ヴィクターには何の特殊能力も表れないのだった。
ヴィクターが記憶の世界に存在している理由が、繰り返されるたびに徐々に内容が増えていく交通事故の「フラッシュバック」によって明らかにされていく。
記憶の中で生きるという発想、夢との関係、「脳死」の働きなど、設定がなかなか面白い。
「宗教」の要素がもっとストーリーに関わっていても良かったかもしれない。
表現はゲーム的な発想を活かしているようだ。