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芸術鑑賞の備忘録

映画『私は、マリア・カラス』

映画『私は、マリア・カラス』を鑑賞しての備忘録

監督はトム・ボルフ。
2017年制作のフランス映画。

 

オペラ歌手マリア・カラス(1923~1977年)のドキュメンタリー。舞台での歌唱を撮影した写真・フィルム、そして音源を中心に、本人のインタヴュー映像と手紙を交えて構成。原題が"Maria by Callas"であるとおり、原則として本人のパフォーマンスと言葉とでマリア・カラスの姿を描き出した点が出色。

 

ニューヨークで生まれ育ったマリア・カラスは、母親の強い要望で歌手の道へ進むことになる。1936年にギリシャに移住後、音楽院に入学し、エルビラ・デ・イダルゴに師事する。卒業後は順調にキャリアを重ねイタリアやアメリカなどの名だたる劇場に活躍の場を広げていく。ところが、1958年年始の公演を体調不良で中断したことから暗転する。

 

マリア・カラスはもとよりオペラにも疎いが、耳にしたことがあるオペラの名曲の数々をマリア・カラスの歌声で堪能できた。
歌声に加え美貌に恵まれたマリア・カラスの大きな目・鼻・口は舞台に立つために生まれてきたよう。
マリア・カラスの繊細さが、突出した才能や華々しいキャリアとのコントラストから、強く照らし出される。そして、その繊細さがあるからこそ優れた表現力を発揮できたのであろうと思わされた。
そして、マリア・カラスの素直さが様々な衝突や誤解を招いたようだ。とりわけインタヴューでアリストテレス・オナシスについて率直に語る姿は素敵だった。彼との終生の交流は起伏の大きいものであったけれども、最終的には受け容れられるものであったと思いたい。