可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 Hogalee個展『Masking / Fixing』


展覧会『Hogalee「Masking / Fixing」』を鑑賞しての備忘録
Gallery OUT of PLACE TOKIOにて、2019年5月31日~年6月30日。

Hogaleeによるマスキングテープを用いた絵画展。

 

Hogaleeは、マスキングテープを画材としてオンナノコを壁などに描き、会期が終了するとテープを剥がす「原状回復」という期間限定の壁画シリーズを制作してきた作家。本展では、マスキングテープで同じ描画をしたキャンヴァスを2枚用意し、一方だけ上から絵具を塗り、テープを剥がすことで、マスキングでの描画が残るもの(Masking)とマスキングの部分が剥がされて地の色で描線が固着したもの(Fixing)との2作品をセットとして呈示している。

 

本展の会場入口の壁面には、マスキング・テープによる力強い線でオンナノコが描かれている。「現状回復」シリーズのテーマが、咲き誇る花や煌めく青春の儚さをオンナノコの像に象徴させているととらえるのは安直に過ぎるだろうか。その場限りという性格は、絵画が視覚的なデータとして閲覧可能な状況が進展していく中で、展覧会という体験の一回性を強調することにもなる。
それに対し、「Masking / Fixing」のシリーズは何を示唆するのだろう。"Masking"絵画のマスキング・テープの描線はいずれ落剥し、実体を失う。"Fixing"絵画のオンナノコは実体(マスキング・テープ)の影に過ぎない。プラトンの「洞窟の比喩」だろう。洞窟(=インターネット)に縛られた私たちは、洞窟の中に反響する声に誤信を強め、ひたすら影を見て満足する。だが、ネガティヴ・ハンドという始原の絵画から、影を見て満足するのが人間だ。哲人国家はいつまでも理想でしかあり得ないのだ。