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芸術鑑賞の備忘録

映画『パラサイト 半地下の家族』

映画『パラサイト 半地下の家族』を鑑賞しての備忘録
2019年の韓国映画
監督は、ポン・ジュノ(봉준호)。
脚本は、ポン・ジュノ(봉준호)とハン・ジヌォン(한진원)。
原題は、"기생충"。英題は、"Parasite"。

キム・ギテク(송강호)の一家は全員職がなく、半地下で貧しい暮らしを強いられている。上に住む家族のWi-Fiを使用していたが、ある日パスワードが設定されてしまったため、ネットにアクセスできなくないと息子のギウ(최우식)が困惑している。ギテクがスマートフォンを上に向けてフリーのWi-Fiを探すようアドヴァイスすると、トイレで最近出来たカフェのWi-Fiを拾うことができた。一家は近所のピザ屋から宅配用の箱を組み立てる内職を請け負っていたが、引き取りに来た店長(정이서)からは4分の1は使い物にならないと報酬を10%減額されてしまう。娘のギジョン(박소담)は、ピザ屋のスタッフが辞めてしまった情報をつかんでおり、ギウはアルバイトさせて欲しいと店長に申し出るが、色よい返事はもらえない。一家が内職の報酬で食事をとっているところへ、ギウの友人でソウル大学校工科大学に学ぶミニョク(박서준)が祖父のコレクションだという縁起物の山水石を手土産に
訪れる。ギウを飲みに連れ出したミニョクは、留学するに当たって、高校2年生のパク・ダヘ(현승민)の英語の家庭教師の仕事をギウに引き継いでもらいたいと申し出る。ギウは大学生ではないため、ミニョクの大学の同級生に当たるよう提案すると、ミニョクは、本気で愛情を持っているダヘを工科大学の連中には任せられないと言い、酒浸りの学生などより大学受験を何回も経験しているお前の方がはるかに指導に向いているとギウを説得する。妹のギジョンが美術の才能を活かしてソウル大学校の学生証を偽造すると、ギウは「ケヴィン」としてダヘの家へと向かう。指定された住所は目を見張る豪邸だった。ダヘの父パク・ドンイク(이선균)はIT企業のCEOとして成功した人物で、ギウを迎えた家政婦(이정은)によれば、建物はかつて高名な建築家が自ら設計した自邸だったという。ダヘの母ヨンギョ(조여정)は、ミニョク先生のレヴェルで指導できないのならばお引き取り願いたいと、授業の様子を見学するという。ギウはダヘの問題の解き進め方を観察し、受験に向けた意識について諭す。娘ダヘと母ヨンギョの心をつかんだギウは、ヨンギョから息子ダソン(정현준)についての話を聞く。芸術的な才能は持っているのだが落ち着きがなく困っていると。ギウはアメリカ帰りの優れた美術の先生がいるから紹介しますと、妹のギジョンを家庭教師として送り込むことを企てる。

 

自分の匂いは、他人からは比較的容易に認識されたとしても、自分自身ではなかなか認識できない。自分の匂いは恐ろしい。

キム・ギウが豪邸での生活にふさわしいのかどうかパク・ダヘに尋ねるシーンがある。環境が「下流社会」に固定化してしまうまなざしを生んでしまう。それもまた恐怖だろう。

恐ろしさは心理面が中心で、過激な残虐描写はないので、幅広く見てもらえる作品に仕上がっている。

パク家の人物が抱える問題は匂わせる程度に提示されるがはっきり描かれない。その匙加減が絶妙。

「運転手用の食堂」や「ドイツ人」は송강호が主演した장훈監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて(택시운전사)』を連想させるが、それを踏まえて制作されているのだろうか。