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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 チェン-ダオ・リー個展『Sleepless in Tokyo』

展覧会『チェン-ダオ・リー新作展「Sleepless in Tokyo」』を鑑賞しての備忘録
メグミオギタギャラリーにて、2020年3月13日~28日。

台湾の作家チェン-ダオ・リーの作品14点を紹介。

《Sleepless No.1》には、リンゴを手にしたディズニーの白雪姫が大きく描かれた壁面を前に、バルテュスの《夢見るテレーズ》のポーズで寝そべる、白雪姫に扮した女性が描かれている。足下に転がる囓られたリンゴは「入眠剤」なのかもしれないが、"sleepless"と題されている通り、女性は眠りには落ちていない。乳房を露わに、スカートがまくれ、左脚のみタイツを脱いでいる女性の姿は、ディズニーで描かれる無垢な白雪姫と対照的だ。また、《Sleepless No.2》は北斎の《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》が描かれた銭湯に、ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》のポーズをとるヌードの女性が貝殻型の浮き輪に立つ姿が描かれている。女性の髪の毛や浮き輪のショッキングピンクキッチュな印象を強めている。複数の絵画をマッシュアップするかのように作品に組み合わせつつ、「コスプレ」のモデルを導入することでパロディとしての性格を強めている。
《Vespa Rider》は、黒いヴェスパにまたがりライトセーバーを振りかざすバットマン風のダース・ベイダーを描いたもの。金色の画面に金色の額縁が合わされ、その額縁にはバイクのライトやハンドルなどが取り付けられている。《Wonder Mazinger Z》は、ワンダーウーマンのポーズに同期するような姿勢のマジンガーZを描いたもの。紅色の画面には紅色の額縁が合わされ、やはりバイクのライトやハンドルなどが組み合わされている。こちらのシリーズでも「Sleepless」シリーズ同様、複数のキャラクターをマッシュアップするかのように作品を組み立てている。この観点からバイクの構造を額縁に取り込んだ理由を考えてみると、原作からキャラクターを切り離して「絵画」として走らせる(=自立させる)狙いがあったのではないか。絵画を壁面から切り離し流通することを可能にしたのが額縁であったのだから。