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芸術鑑賞の備忘録

映画『ペトラは静かに対峙する』

映画『ペトラは静かに対峙する』を鑑賞しての備忘録
2018年のスペイン・フランス・デンマーク合作映画。
監督は、ハイメ・ロサレス(Jaime Rosales)。
脚本は、ハイメ・ロサレス(Jaime Rosales)、ミシェル・ガスタンビデ(Michel Gaztambide)、クララ・ロケット(Clara Roquet)。
原題は、"Petra"。

画家のペトラ(Bárbara Lennie)は、彫刻の巨匠ジャウメ・ナバロ(Joan Botey)に学ぶため、彼の屋敷に滞在して制作を行うことにする。資産家でもあるジャウメの屋敷は、邸宅や工房だけでなく、猟場など付近一帯に広がっていた。到着したペトラを出迎えたのは、気立てが良く有能な家政婦のテレサ(Carme Pla)。彼女から部屋を案内され、敷地を見て回るよう促されたペトラは、早速工房を訪れるが、アシスタントのジュアンジョ(Chema del Barco)からジャウメはベルリンに滞在していると告げられる。邸宅でペトラはジャウメの妻マリサ(Marisa Paredes)と夕食をとる。一緒に暮らしながら、ジャウメと食卓を囲むことはほとんどないという。マリサが金の重要性を説くのに対し、ペトラは金には執着しておらず、真実を求めていると訴える。マリサはジャウメから学べることはないだろうと告げる。ジャウメの子ルカス(Alex Brendemühl)は写真家で、旅の写真集を2冊出版し、現在はスペイン内戦の戦没者の墓のシリーズに取り組んでいた。ルカスはペトラをすぐに気に入り、ペトラのアトリエに顔を出して制作に拘るなどしていた。ペトラもルカスに好感を抱いているが、ともに
敷地を散策しているとき、ルカスからのキスを拒む。ペトラはお茶を濁すような言い訳ををしたが、それはペトラがルカスの義理の妹に当たると考えていたからだった。ペトラの母ジュリア(Petra Martínez)はペトラの父について口をつぐんだまま亡くなったが、叔母がジュリアの古い友人などから、ジャウメが父だろうとの情報を得ていた。ペトラがジャウメの元にやって来たのには、父であることを確認するためであった。ところで、テレサには、息子パウ(Oriol Pla)に仕事が無いという悩みがあった。夫のジュアンジョに、ジャウメの雑用係として採用してもらうよう頼んでいたが、上手くいっていなかった。ジュアンジョから口利きを頼まれたルカスは、帰ってきたジャウメにパウに仕事を与えてやって欲しいと早速願い出るが、ジャウメはテレサが直接願い出るのが筋だと言い放つ。

 

ジャウメには、兄に家を追い出された過去があり、その復讐心が彼を成功に導いた。彫刻の制作においても、様々な素材を自分の思う形へと作り上げる繊細にして冷徹な判断力が活かされている。だが、彫刻のための材料を扱うようには、人間を扱うことはできない。そして、ジャウメが自らの腕を伝授するとき、自らの復讐心をも乗り移らせてしまうのだ。

第2章と題された場面から始まるが、映画のみならず、およそ物語は、必ず時間軸に沿って展開するものではない。「章」という枠組みが与えられ、しかもその順番が変えられることで、因果を追う意識を鑑賞者に強く印象づけようとしたのかもしれない。