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芸術鑑賞の備忘録

映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のフランス映画。101分。
監督・脚本は、グレゴリー・マーニュ(Grégory Magne)。
撮影は、トマ・ラメ(Thomas Rames)。
編集は、ベアトリス・エルミニ(Béatrice Herminie)とグウェナエル・マロラン(Gwenaëlle Mallauran)。
原題は、"Les parfums"。

 

ギョーム・ファヴル(Grégory Montel)が、9歳の娘レア(Zélie Rixhon)をスイミング・プールに連れてきた。泳いでお腹が空いたと訴える娘に、菓子の自動販売機を示す。どれにするんだ。小銭がないな。持ってるか? ギョームは娘が心配するのも気にせず自動販売機をガタガタと揺らし出す。ギョームの動きに気が付いたインストラクターがプールサイドから飛び出して来る。硬貨を入れたんだが、出てこないんだ。インストラクターは自動販売機の扉を開けて菓子を取り出すと、レアに渡す。ギョームは、レアから菓子を分けてもらう。
裁判所の一室。ギョームの弁護士(Paul Jeanson)が判事(Jeanne Arènes)に書類を差し出す。20平米のワンルーム? いや、25平米はありますよ。あなたの友人が来たり、深夜にテレビを見ているとき、娘さんはどうなるんです? ルーシー(Lisa Perrio)とその弁護士(Irina Solano)も出席して、ギョームが共同親権を行使してレアと同居することの可否が話し合われていた。年頃の娘のための空間を用意できない限りギョームに同居は認められないと判事は判断を下す。
ギョームが中華レストランに入る。カウンターでコーヒーをもらい、奥のテーブルへ。そこはアルセーヌ・ペリシエ(Gustave Kervern)が営むハイヤー会社の事務所代わりに使用されていた。テーブルの上にギョームの車の鍵が無い。俺の鍵はどこだ? また速度違反しただろ、バッチリ写ってる。アルセーヌはギョームに写真を渡す。9ポイント目だ。もう3ポイントしかない。アルセーヌ、馘は困るぜ。無職になったら娘のために部屋を借りられなくなっちまう。必死に懇願するギョームにアルセーヌが折れ、アンヌ・ヴァルベルグ(Emmanuelle Devos)の送迎をするよう指示して鍵を渡す。
ヴァルベルグの住まいの前に車を停め、門のインターホンを押す。マダム、ハイヤー会社の者です。マダムじゃないわ。3階に上がって。ギョームが顔を見せると、アンヌは荷物を降ろすよう指示する。グレーのスーツケースは丁寧に扱って。荷物を降ろし、車に積む。グレーのスーツケースは嵩が張っているが何とかトランクに詰め込めた。グレーのスーツケースは後部座席に置いて。アンヌが助手席に座る。高速の入口で停止した際、アンヌはギョームにヴァージニア産の煙草を吸っているのではと指摘する。よく分かりましたねとギョームがポケットから箱を取り出すと、アンヌがそれをもぎ取り、車外のゴミ箱に投げ捨てる。何するんですか! 禁煙よ。ギョームは慌てて車を降り、ゴミ箱からタバコを取り出す。途中、給油に立ち寄った際、ギョームは美味そうに煙草を吸う店主(Claudine Baschet)に勧められて一服する。トイレで喫煙の証拠を隠滅したギョームが車に戻る。煙草を吸ったでしょ? ここの店主の煙草の臭いが移ったんですよ。アンヌはギョームの手を取ると臭いを嗅ぐ。すると、車を降りて、トイレへと向かう。水道に取り付けられていた石鹸を見てご満悦のアンヌ。昔、イギリスで海水浴に行ったときに置いてあったお気に入りの石鹸と同じだったのだ。アンヌはこの石鹸が欲しいと訴えると、店主は在庫の新品を取り出してきた。ホテルに泊まると、荷物を運び込んだギョームに、シーツを持参したものと交換するよう指示する。洗剤の化学薬品が嫌なのだ。それは運転手の仕事じゃないと立ち去ろうとするギョームに、経費を誤魔化しているのを知られてもいいのと声をかけ、手伝わせる。ギョームとシーツを掛け替えた後、アンヌは部屋で一人、香りの調合に取りかかる。翌日、車が目的地の森に着くと、何人かの人々の姿があった。付いて来られたら仕事にならないわ。誰なんです? 行政の人たち。何か理由を付けて追い払って。何を言えばいいんです? それは考えて。ギョームはアンヌを待つ人たちのところへ行って話をつける。二人は林道を下って地下の洞窟へ入っていく。私が言ったことを忘れないようにノートに書き留めて。洞窟の壁面には壁画が残されていた。アンヌは壁や地面に手をこすりつけ、臭いを嗅ぎ、何を嗅ぎ取ったかを言葉にしていく。メモを取りながら、アンヌの鋭敏な嗅覚がとらえた繊細な香りをギョームも嗅いでとらえていく。帰りの車内でアンヌがギョームに説明する。地方政府が作った洞窟壁画の忠実なレプリカにふりかける、洞窟の臭いを再現した香料を制作する仕事なのだと。アンヌの住まいに到着し、荷物を降ろしていると、突然通行人の男がアンヌのバッグを奪おうとする。ギョームが跳びかかると、男はギョームを殴りつけて逃走する。何で跳びかかったの? 刃物でもあったらどうするの? あなたはいつも命令ばかりだ。「ありがとう」も「おねがい」もない。もう沢山だ。ギョームは荷物とアンヌを置いて車に乗り込むと、急発進する。

 

輝かしい実績を誇るが、ストレスで嗅覚と信用を一度失ってしまった孤独な調香師アンヌ・ヴァルベルグ(Emmanuelle Devos)と、愛娘レア(Zélie Rixhon)との同居を実現したい貧しい運転手ギョーム・ファヴル(Grégory Montel)という似ても似つかない二人が、嗅覚で繋がり、お互いを刺激し合っていく。
映画『グリーンブック』(2018)に通じるものがある。