映画『Zola ゾラ』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。
86分。
監督は、ジャニクザ・ブラボー(Janicza Bravo)。
原作は、デビッド・クシュナー(David Kushner)の雑誌記事"Zola Tells All: The Real Story Behind the Greatest Stripper Saga Ever Tweeted"。
脚本は、ジャニクザ・ブラボー(Janicza Bravo)とジェレミー・O・ハリス(Jeremy O. Harris)。
撮影は、アリ・ウェグナー(Ari Wegner)。
美術は、ケイティ・バイロン(Katie Byron)。
衣装は、デリカ・コール・ワシントン(Derica Cole Washington)。
編集は、ジョイ・マクミロン(Joi McMillon)。
音楽は、ミカ・レビ(Mica Levi)。
原題は、"Zola"。
2015年10月27日、@_zolarmoonは、148のツイート。ほぼ事実。
鏡が張られた煌びやかな部屋。鏡に向かい、黒人女性のゾラ(Taylour Paige)と白人女性のステファニー(Riley Keough)が並んで、髪を直し、マスカラを塗り、口紅を付ける。歯に口紅が付かないように右手の人差指をしゃぶるところまで2人の動作は揃っている。生え際の産毛をなでつける。ゾラが言う。私とこの売女がどうなるか聞きたい? 長いけどさ、ドキドキする話。
レストラン。赤い制服の女性たちが給仕している。ゾラがテーブルで男から注文をとる。ホステス・スタンドに戻ると、ゲイル(Nelcie Souffrant)が賄いを食べながら、今ゾラが注文を取ってきた客の悪口を言う。ぞっとするやな奴。皮膚が赤くなるの何て言ったっけ? テレビでやってんの見たことある。しゅさ。それ!
ゾラは、ステファニーとジョナサン(Nasir Rahim)が向かい合って座るテーブルへ向かう。街に近いほど女の子は可愛くなる。そういうもんだよな。食物の中のホルモンは、水の中のホルモンを助ける。鶏肉は本物の鶏肉の味がする。いや、そいつは鶏肉じゃない。そうですね。ジョナサンの語りにゾラは適当な相槌を打つ。ジョナサンがフライドチキンの盛り合わせを注文すると、ずっとスマートフォンを眺めていたステファニーがハラペーニョ・ポッパーがあるか尋ねる。ありません。
ウェイトレスとして働いているレストランで、この白い売女に出会った。ステファニーは年寄りのでかい黒人の男と一緒だった。
あんた、完璧なおっぱいしてんじゃん。こんなおっぱいならいいのに。ちっちゃなリンゴみたい。ゾラを見たステファニーが称賛する。ゾラはどうもと礼を言う。俺の前でレズっておいて俺を仲間に加えないのか? あんたって馬鹿ね。何でそんなに馬鹿なわけ?
ゾラがホステス・スタンドで注文を印字する。私の担当は気違いばっかり。あんたが言ったんだよ、私じゃなくて。食事を終えたゲイルが疲れたからと言って勝手に休憩に入るのをゾラが渋い顔で見る。
客席から厨房への通路でゾラがステファニーと向かい合っている。会った気がするんだよね。いつ? 分かんないけどさ。ダンスは? 時々。私も踊ってる。そうなの、私も。いいね。ここは入ってきちゃ駄目。今夜の予定は? 何も。私とどっかに行きたい?
ストリップ・クラブ。ゾラがステージに設置されたポールを使ったダンスを見せ、観客を沸かせる。ステファニーもステージに立ち、客を挑発するパフォーマンスを行う。
ゾラ(Taylour Paige)がレストランでウェイトレスの仕事中、客のステファニー(Riley Keough)に声を掛けられる。ストリップ・ダンサーをしている2人は意気投合し、その晩一緒にストリップ・クラブへパフォーマンスに出かけた。翌日、ゾラはステファニーからタンパに大金を稼げるクラブがあるから一緒に行こうと誘われる。出会ってすぐの旅行の提案を訝しむゾラだったが、ステファニーに押し切られる。翌日、ラリっているステファニーと、彼女の頼りない恋人デレク(Nicholas Braun)とともに、不穏な雰囲気を漂わせるX(Colman Domingo)の運転する車で、ゾラはタンパへ向かう。Xは休憩が必要だと侘しいモーテルに車を停めると、デレクだけを部屋に残し、ゾラとステファニーをストリップ・クラブに連れて行く。だがステファニーの話に相違して大して稼げなかった上、客の反応にゾラは気分を害していた。ステファニーから客を取ってもっと稼ごうと提案されたゾラは断る。だが既にクラブの楽屋で撮影した写真が売春サイトにアップされ、Xからは職場も自宅も分かってると脅される。Xによって2人は海沿いの高級ホテルの1室へと連れて行かれる。
ゾラは自宅にポールダンスのためのポールを設置して、練習を欠かさない。プロのパフォーマーとしての矜持がある。だがストリッパーとして、ステファニーのように売春を行うものという視線を注がれている。
ゾラにとって、同居する恋人ショーンはどんな存在なのか。ステファニーにとってのデレク、あるいはXもそうだが、人と人との結び付きは合理的なものではないのだろう。
温暖湿潤気候のタンパは、冷帯湿潤気候のデトロイトのほぼ真南南国の別世界には夢を容易に重ねることができるのかもしれない。1200マイルほどの距離がある。仮に時速100キロで20時間。作中にも自動車を延々と走らせる描写がある。
十字架やアメリカ連合国の旗がロードサイドに映し出される。