可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 鈴木友昌個展(2025)

展覧会『鈴木友昌個展』を鑑賞しての備忘録
SCAI THE BATHHOUSEにて、2025年8月23日~10月18日。

衣装やアクセサリー、タトゥーなどを忠実に再現した像高50~60cmの人物彫刻4点で構成される、鈴木友昌の個展。

《NANAMI》(510mm×220mm×100mm)は、青地に黒の柄が入ったバケットハット、水色のシャツ、黒のパンツを身に付けた男性が左足に体重をかけて立つ写実的な木彫。左手はパンツのポケットに入れ、右手は一眼レフのカメラを持つ。袖を捲り上げた右腕には炎、蛇、黄色い車のタトゥーが覗く。左耳のピアスにはピアス。キース・ヘリングのキャラクターがプリントされたドクターマーチンの3ホールブーツは青と黄と左右で異なるシューレースチャームも印象的である。何か考え事をしているのか、心ここにあらずといった表情をしている。
《SONYA》(510mm×220mm×120mm)は、セーラー襟と大きなリボンがポイントの白と淡いピンクのブラウスとスカート、赤いリボンを遇った白いオーバーニーソックス、ピンクの厚いソールのグラウンズのスニーカーというロリータファッションの女性立像。ピンクのショルダーバッグにはバッグより大きな猫のぬいぐるみをぶら下げ、左腕には「ロリイタの聖地しもつま」と書かれたジャスコ下妻店のショッピングバッグを提げている。傍らにはロリータファッションブランド「BABY THE STARS SHINE BRIGHT」の紙袋が置かれている。ぼんやりとした目で、やや虚ろな表情を浮かべる。
《ARIMICHI》(600mm×195mm×115mm)は、「1977」と胸にプリントされたオーバーサイズの濃紺のパーカーの上からノースリーブのホワイトグレーのジャケットを羽織り、ジャケットとセットアップのようなワイドパンツを穿き、グレーに青のナイキのエアジョーダンを履いた、ドレッドヘアの男性の木彫。シルバーのピアスがアクセントとなっている。シャープに整えた眉と相俟って、正面を見据える眼差しが印象的である。
《GRETA》(530mm×165mm×100mm)は、Miss Poshのニューヨークの名所を遇ったタイトなピンクのTシャツに黒いショートパンツ、サンダルで立つロングヘアの女性が右足に体重をかけて立つ姿を現わした木彫。赤い眼鏡をかけた女性はぼんやりと正面を見ている。右脚の膝頭の上の蝶のタトゥーが目を惹く。
いずれも細部まで再現した写実的な木彫であるが、高さは実寸の3分の1~4分の1の間に抑えられている。鑑賞者の視線の高さになるように台座に設置されるのではなく、床に直に置かれている。その結果、細部を見るためにしゃがみ込んで見るか、4体の彫像を俯瞰するかのどちらかになる。俯瞰するとき、互いに視線が交わらない4体の関係が浮かび上がる。相笠昌義が駅や公園に佇む人たちが同じ場所に居合わせながら、互いに無関心である都市生活者の有り様を描き出したことが想起される。相笠昌義が人物をややずんぐりした形にデフォルメして見せたように、作家は写実的な表現をしながら敢て実寸より小さく表現することで、標本化ではなく図鑑化を、すなわち怜悧な客観的な眼差しを向ける。ハードボイルドな世界を起ち上げるのである。