映画『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』を鑑賞しての備忘録
2018年のカナダ・イギリス合作映画。
監督・原作は、グザビエ・ドラン(Xavier Dolan)。
脚本は、グザビエ・ドラン(Xavier Dolan)とジェイコブ・ティアニー(Jacob Tierney)。
原題は、"The Death and Life of John F. Donovan"。
2006年のニューヨーク。エイミー・ボズワース(Emily Hampshire)が、自分の荷物を引き取るためにジョン・F・ドノヴァン(Kit Harington)の部屋を訪ねる。鍵はかかっておらず、締め切った部屋には異様な臭いが漂っている。エイミーはジョンに声をかけながら部屋の奥へと向かう。
アメリカ出身でイギリス在住の子役ルパート・ターナー(Jacob Tremblay)は母親のサム(Natalie Portman)とともにニューヨークを訪れている。ロンドンで受けたアメリカ映画のオーディションに合格したのだ。ルパートがオーディションに熱心だったのは故郷アメリカの作品だったこと以上に、文通相手であるジョン・F・ドノヴァンに初めて会えるという期待があったからだ。カフェでルパートは滞在先のホテルに届くことになっているジョンからの手紙をサムにせがむ。だが、サムは不達だの誤配だのと理由をつけて手紙の話題を終わらせようとする。何か食べるようにお金を渡されたルパートが人だかりの方へ向かうと、テレビで俳優ジョン・F・ドノヴァンの訃報を伝えていた。
2017年プラハ。タイムズ誌の記者オードリー・ニューハウス(Thandie Newton)は、急遽、俳優ルパート・ターナー(Ben Schnetzer)にインタヴューすることになる。テーマは彼の著作『年下の俳優への手紙(Letters to a Young Actor)』についてだったが読む暇などなく、そもそも政治や環境を扱うオードリーの関心領域でもなかった。しかも現れたルパートは幼稚で生意気な若者で、飛行機までの時間を稼ぐつもりでインタヴューに臨んだ。ターナーはジョン・F・ドノヴァンと文通していた当時について語り出す。
母親が離婚して、父親の住むイギリスに引っ越してきた。だがアメリカ出身の子役のルパートに学校での居場所は無かった。ルパートは、人気テレビシリーズ「ヘルサム・ハイ」で超能力を持つ高校生を演じるジョン・F・ドノヴァンに自らを重ね、部屋にはびっしりとジョンのポスターを貼っていた。ルパートがジョンの活躍に入れ込むのは、彼がルパートのファンレターに緑色のインクが印象的な手書きの手紙を送り続けていたからだった。
人間関係(とりわけ家族関係)の醜さと美しさ(ジョンがエイミーを連れだって戻った実家の地獄絵図、あるいは決定的な仲違いをしてしまったかに見えたルパートとサムが愛情を確認し合うまでの流れ、などなど)を、洗練された映像と的確な音楽とで包み込む。