可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 新井慈シャナ個展『Sinew』

展覧会『新井慈シャナ「Sinew」』を鑑賞しての備忘録
KOKI ARTSにて、2025年11月22日~12月27日。

​染めた絹に規則性のある連続模様や抽象化された身体を描き込む作品で構成される、新井慈シャナの個展。展覧会のタイトルに掲げられた"Sinew"は、筋肉と骨の間にあって身体の動きを支える組織、縫い合わせたり結びつけたりする丈夫な糸、力そのものを意味する言葉とのこと。

《Sinew 1》(100mm×100mm)は、それぞれ浅葱色、茶、群青、橙に染めた絹を重ね合せるように縫い合わせた作品。一番下の浅葱色の右側半分を茶色で覆い、浅葱と茶の上から群青を被せ、茶の上に群青の角と重なるように橙の方形を重ねる。渋い色味の絹を重ね、太い縫い糸が無骨に現われる作品は、色面で構成される抽象絵画とは全く趣が異なる。《Sinew 2》(180mm×140mm)は、淡い青緑、緑と黄の混色、茶でそれぞれ着彩した絹を重ね、《Sinew 3》(180mm×140mm)は、明暗・濃淡の異なる藍色の布にごく淡い茶色、目の覚めるような青で構成され、いずれも布を縫い合せる黄色い糸が印象的である。色彩とその配置に目を奪われるが、"Sinew"と題されていることからすれば、断片を縫い合わせる糸こそ主題なのだろう。糸は影に日向に世界を繋ぎ併せること、さらに運針による日常的な営為を象徴する。