可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 奥澤華個展(2025)

展覧会『奥澤華展』を鑑賞しての備忘録
JINEN GALLERYにて、2025年12月2日~14日。

家屋などを表した「まほらば通り」シリーズ、給水塔を表した「ひそむかたち」シリーズ、立方体の箱「転生」シリーズなど、腐食させた銅板で作られた立体作品で構成される、奥澤華の個展。

まほらば通り 7-3》(188mm×55mm×117mm)は2階建ての住宅の壁面を表した壁掛けの作品。屋根も壁面も窓枠も雨水管も全て緑青で統一されている。窓は内部の空洞、闇を覗かせる。切妻屋根の縦の線が雨水管、そして緑青の色味とともに雨水のイメージを引き寄せる。《まほらば通り 6-3》(270mm×45mm×222mm)は、工場と思しき2階建ての建物。オレンジ色の壁面は錆びた鉄板が張られているように横方向の線がいくつも走る。急角度の外階段の先にある2階のドアの真下に1階のドアがある。屋上の柵がアクセントである。《まほらば通り 6-3》(131mm×36mm×128mm)は片流れ屋根の2階建ての小豆色の建物。1階の緑青のシャッターと2階に並ぶ窓が印象的である。隣には電柱(32mm×42mm×190mm)が添えられる。これらの他にも、3点ずつが組み合わされて高さを揃えて壁面に設置され、通りの雰囲気を生む。通りを流れるように眺める作品群は、立体作品ではあるものの、《熈代勝覧》や藤牧義夫隅田川両岸画巻》など絵巻物の系譜にあると言えよう。腐食により時間を進める作家は、時間を自らの手で自在にスクロールさせているのである。
《Wall 9》(122mm×30mm×340mm)は短冊のような縦長の作品。緑青の壁の右端に配管が並ぶ。これと対のような《Wall 10》(122mm×30mm×342mm)は、鉄錆の壁面の左上に配管が並ぶ。タイトル通り、建物から配管などとともに壁面だけを取り出した作品である。短冊のように縦長に切り出したのは、「まほらば通り」の水平方向の連続性と対照させるためであろう。福原信三が撮影し、佐伯祐三が描いた壁は、そもそも絵画の祖型でもある。あるいは壁という切断によってかえって流れが意識に上るという意図があるのかもしれない。
赤銅色を呈する銅板製の立方体《転生 14》(60mm×60mm×60mm)は、水平や垂直といった把握を不可能にする。上下左右を判断することができないからだ。秩序を壊乱する悪魔を召喚すべく、敢て6cm×6cm×6cmと6が3つ並ぶサイズが選択されているのであろう。秩序を混乱させる悪魔にこそ、転生の可能性がある。天使が堕天使となるように、神と悪魔とは表裏一体なのだから。