展覧会『インベカヲリ★写真展 ふあふあの隙間』を鑑賞しての備忘録
ニコンプラザ新宿 THE GALLERY 新宿1・2にて2018年11月6日~26日。
インベカヲリ★による女性のポートレート。道路に立つ女性、建物の影に佇む女性などありがちな印象のポートレートから、銀座の目抜き通りで寝転る女性、新宿の雑踏で座禅を組む女性、そして、着飾って崖を登る女性、排水溝で横になる女性、さらには大雨に打たれて公園に立つ女性、服のまま水中に潜る女性、沼に入って顔だけを出す女性といったぱっと見て「おっ」となるポートレートまで様々な作品が並ぶ。タイトルだけでなく、多くの作品に、モデルのモノローグか、作者によるインタヴューが付されている。華やかな生活を送っているように見える者はその裏にある事情を語り、明らかに破綻している生活を送る者は社会とのズレを冷静に捉えている。作者は、モデルの生活を聞き取り、そこで掴んだ情報をもとに撮影場所を選び、モデルのポーズを決めている。モデルは作者に自らを語ることで日々の中で生じる違和を吐き出し、その違和を含めた自らが作品に昇華されることで何らかのカタルシスを感じているようだ。撮影を通じた占い師の姿を作者に見る。
インベカヲリ★は、誰もが抱えざるを得ない社会と自らとの間にあるズレ、もしも表してしまうと無理矢理に矯正されてしまうような社会からの逸脱を「隙間」と捉えるという。
「他の人が当たり前にできることができなかったり、なぜかいちいち立ち止まってみたくなったり、完成したものを叩き壊したくなったり、知っていて破滅に向かいたくなるとき、ふわっと隙間が開いてその人が見えてくる。その瞬間、私は人の頭の中を覗いてみたい欲望にかられる。」
「隙間」は他人が抱える秘密だ。作者を通して知るとき、他人の秘密を覗き見る欲望がかなえられる。なおかつ他者も生きることの違和を抱えることを確認できる安心感まで得られる。作品の魅力はそこにあるのかもしれない。