展覧会『尾関立子個展 tracing』を鑑賞しての備忘録
ギャラリー椿にて、2018年11月17日~12月1日。
エッチングやアクアチントによる銅版画を複数組み合わせることで産み出されたイメージ。
「手や身体が動いた軌跡によって点や線、形、空間が生まれ、その描かれたイメージは自らを知る行為の痕跡とも言えます。」
《Map/Composition》のシリーズは、建物などの構造物の断片、あるいは樹木などの植物の断片が黒いインクで表わされている。いずれの形も何かをはっきり示しきってしまうのではなく、何かを構成している部分であることをやめようとしない。黒色の持つ強さは、刷られる紙の黄土色によりコントラストが弱められ、個々のイメージの曖昧さが保たれている。また、その紙色はノスタルジックな印象を喚起させる。何が描かれているのかをつかもうと線を辿っていく。けれども掴みきれずに、さらに画面の中の線を追いかける。記憶の中に照合できる何かを探り出そうとするも徒労に終わり、画面の中を彷徨い続ける他に無い。別々の世界を表わすmapが組み合わされることでmazeが生まれているのだ。