展覧会『五月女哲平「our time 私たちの時間」』を鑑賞しての備忘録
青山目黒にて、2020年2月22日~3月22日。
五月女哲平の絵画10数点を、モノクロ―ム(?)とカラーの2つのセクションに分けて紹介。
《Our Time #2》は縦長の板2枚から成る作品。黒地に白で表された人物は、幾何学的な形態に極端に抽象化され、左右の画面に二人ずつ配されている。右側の画面の上部に描かれた、横から顔を出して様子を窺う(?)人物などには、本作品が双幅の掛け軸に類することもあり、南天棒の《托鉢往還図》 などに通じる諧謔味がある。
《We #1》は、円形の黒い画面に、抽象化された人物4人並ぶ姿を白色で描いたもの。頭部は四角形、円形の上部と四角い下部とを組み合わせたもの、円形、四角い上部と円形の下部を組み合わせたものとそれぞれ形を変えてある。腕の表現が省略され脚は画面から切れている胴部は三角形で、わずかな肥痩とお互いの重なり合い具合で個性を演出している。一方、類型的な形、密接、背丈が揃っていることと、画面が円形=輪であることとで、一体感が強く表現されている。黒地に白の単純な造形は力強さを生み出しそうだが、画面からは軽やかさを感じる。一見するとモノクロームだが、輪郭線に当たる部分に赤や緑が見えることが一役買っているのかもしれない。「差し色」とも言えないごくわずかな色味に魂が宿っている。
《Girls》は、横長の長方形の黒い画面に、抽象化された女性4人を色彩豊かに描いたもの。髪、顔、衣服(複数のパーツから成る)で色を塗り分け、かなり明るい色も用いられているが、全体としては落ち着いた雰囲気を保っている。配色のみならず背丈も異なり、顔も皆別の方向を向くように表されているが、女性たちの一体感は失われていない。暗闇の群像劇という点でビル・ヴィオラの《The Quintet of the Astonished》を想起させるものがあり、「動く絵画」とも言えそうだ。